日本の伝統文化にある「心の豊かさ」をテーマに平成8年から地元の工芸作品を中心にオリジナル品を加え、主婦の目線から見た使い心地の良いものを集めてお店をつづけられている、漆アート花筏さんに、心温まるお話を聞かせていただきました。
お店っていろんな人との出会いで育ててもらってきてるな、ってうんと感じてる。
せっかく奈良井に旅に来てくれた、その人の心に残るものを
ここに嫁いでこの地元で生きていくために、なにか身につけたいなと思って、漆に興味をもって、平沢(塩尻市木曽平沢) の木曽高等漆芸学院に5年行かせてもらったのがきっかけで、最初からお店しようなんて考えていたわけじゃないんだけどね。
たまたまのなりゆきで、ここまできたけど、職人さんの仕事に触れたことで、ブレずにこれたってことかな。
ここにある商品は、誰が作ったかわかる商品ばかりで、職人さんと向かい合って、お客さんに説明できる、これは資源だと思っています。つくるものって、みんな職人さんの人があらわれているんだよね。
山の畑から、大根とってきたおじさんが歩いている、その生活感とゆったり流れる時間が奈良井のごちそう
奈良井は化石や観光地じゃなくて、そこに生活がある。江戸時代に住んでいた奈良井に住んでいた昔の人たちも、服装や見た目は違えど、今と同じような水場の風景やゆったりした時間が流れるこの奈良井で、生きていたのかな。ここには気負わない暮らしあるんだよ、そこが奈良井のごちそう、奈良井の良さって、そこだよなって。
最後に残るのは人と人
お店の看板を出してあることで、人が入ってきてくれる、人とお話をすることが、心の栄養になる。
会話を通してエネルギーを奪うんじゃなくて、与えられる生き方がしたいなとおもってきた。
15年くらい前の雪の降る2月、平沢から若い女の子がおわんを探しに歩いてきて、このまり椀がほしいって、でも当時このまり椀、9,500円、この若い女の子が買えるのかなって思ったんだけど、その女の子はね「私の周りにあるもの全てがガラクタですが、 これ一つあると何でも頑張れる気がします。」ってボロボロ泣き出してね、私感動しちゃった。そのとき、ここに作り手がいたらどんなに嬉しいかなって、心こめて作ってるからね、その職人さんの嬉しい顔が浮かぶんだよ。私も良い形で作り手と使い手の橋渡しができるお店にしたいなっていうのが自分の考えでもあって、その場面をその女の子が見せてくれたんだよ。その女の子の涙を見たときに、今までの経験、環境がなかったら、この感動を感じられなかったと思える瞬間だった。だから、無駄ってなんにもないね、大変なことがあってもなにかの遠回りで、自分のためになるんだって思ったら、怖いものなんて、なんにもないかもしれない、そんな気がする。
あとから、絵葉書に、椀と私って水彩絵の具で絵を書いて、送ってくれたんだよ。お店やってると、いろんな人が入ってきてくれる、お店って出会いだよね。